はじめての夏祭り2 |
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ある日、家族に送ってもらったダンボールの中を確認すると野菜とみかんと一人暮らしに必要な日用品が入っていた。ちはるの祖父母はみかん農家で、毎年春に採れるみかんを送ってくれる。丸く橙色のみかんはちょうど手に収まる大きさで、美味しそうな香りがした。 懐かしい気持ちになったちはるは外の空気が吸いたくなり、縁側に出た。とてもいい天気だった。しばらく窓を開けたまま、届いた荷物を整理しようと残りのみかんを手にとった。そのときうっかりとみかんがちはるの手からすべり落ちてコロコロと回りながら窓の外へ飛び出してしまった。 「あ」 ちはるはみかんを追いかけ草むらの中を探したが、落ちたみかんはどこにも見当たらなかった。 夜、ちはるが風呂から上がると、ガサガサ ガサガサという音が台所の方から聞こえてきた。 「まさか・・・G!?」 恐る恐る近づくと、床から細長い影が伸びていて、それは――ヘビだった。ただ普通のヘビと違い体は異様に大きく、口から舌のようなものがにょろにょろと伸びていて、台所を漁っていた。色は黄色く光り、まるで人間の手のようにも見えた。そしてもう一つ、 「おい、あの丸いやつないか」 そのヘビらしきものは人間の言葉をしゃべった。ちはるは驚きのあまり呆然とし、そのまま目の前が暗くなった。 (あの…丸いの?) ちはるが目を覚ますといつもの天井だった。そして何かが頬を叩いた。 「大丈夫か?」 ヘビがちはるを見下ろしていた。ちはるは深く息を吸い 「あの丸いのって…なに?」 とヘビに話しかけた。ヘビは嬉しそうに 「あの甘くてじゅわっと汁が出てくる丸いのだ!」 と答えた。ちはるは昼にどこかへ行ってしまったみかんを思い出した。 「これ?」 「そうだ!」 キラキラとした目でヘビはみかんに近づく。が、ちはるはみかんを持つ手を高くかかげ、 「ちょっと待って。あなた蛇?」 「蛇じゃない」 「蛇じゃないの!?」 「姿を真似ているだけだ」 「どういうこと!?」 「蛇じゃないけれど、そのようなものだと思ってもらって構わない」 「はあ」 「いいから、それをくれ!腹が減ってるんだ」 ちはるは渋々とみかんを差し出すとヘビは器用にみかんを掴み、まるまる口の中へ持っていった。 「それ食べたら出て行ってよ」 「わかった」 ちはるは疲れたのでそのまま寝ることにした。不思議とヘビに対する恐怖心はなかった。 |
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