はじめての夏祭り4 |
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まんまと梓のペースに乗せられたちはるは、梓に対して不満を持ちつつも、最初に感じた不快な気持ちはいつの間にか消えていた。つい最近、どこかで感じたような既視感だった。 家に着くと、既視感の正体がお出迎えしてくれた。ヘビは目をキラキラさせて「お腹すいたぞ!」とちはるの帰りを玄関で待っていた。ちはるは疑問を口にした。 「前にヘビじゃないって言ったよね。本当はなんなの」 ちはるの問いにヘビは少し考え込むような仕草をして 「ちはる、こっちこい」 とちはるを招いた。ちはるが近づくと、ヘビの口は大きく開き一瞬でちはるを飲み込んだ。あたり一面がまっくらになり、ちはるは目を凝らした。遠いような近い場所に、何かがいた。 暗闇の中、ボウッと浮かび上がったそれは―― 女の姿をしていた。 「ひ」 ちはるが悲鳴をあげそうになったとき、外へ放り出された。 「なに今の!?」 「しっ。誰か来てしまうぞ」 「いやだって」 「私は人間だよ。ただ生まれた時、私はヒトの形を持っていなかった。近づけることはできたけれど…私を見た人間は皆、私のことを恐れて逃げて行ってしまった」 ヘビは寂しそうな顔をした。 「ヘビの姿なのはどうして?」 「人間(そのまま)の姿だと目立ってしまうから、トキが何か動物に姿を変えればいいと言って」 するとヘビは蛇がいかに優れた生き物かを語り出した。饒舌に話し始めたヘビとは対照的にちはるは声が出なかった。混乱してヘビの話は全く頭に入ってこなかった。 女は自らの姿をヘビの中に隠し、黄金のように光る液体の中でひっそりとしている。 「トキ、どこに行ったんだ」 女は液体の中に手を入れると奥底に沈んでいるむくろを拾い上げた。 「やはり、お前が…」 |
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